たかす文庫vol.78 (2018年秋号)より
杜(もり)のある街へ
高松の街の中に100年続く杜をつくろう。
そんな想いが発端となった「たかすの杜」づくりは、2005年から始まりました。
先ずは5トンの竹炭を図面を起こして穴を掘り、25か所(1㎡円形・深さ1m)に埋めました。
土地の整備がひと段落すると高知から古神道の神主さんをお招きし、祝詞をあげてもらい、周囲を四万十の杉の板で囲い、70種ほどの草木を植えて、2006年、杜の形になりました。

それから12年が経ちました。
春夏秋冬それぞれに杜が見せてくれる表情や美しさに、心癒されつつ四季の移り変わりに感謝した日々でした。
私達は草木なしに生きてはゆけないと改めて感じました。しかしその日々は、いかに私たちが自然から離れた暮らしをしているかを体感する日々でもありました。

杜の中に立っていると、木々の間に見える空を楽しみながら深呼吸すると心と身体が浄化されていることを感じ、日々の暮らしから「潤い」「情緒」が消えている事が良く分かります。
市中の閑居「掌庵」

杜をつくって10年が過ぎた頃、無垢の杉でできた楕円形のデッキが朽ちてきました。そこで新しく作り直そうと木材を取り除いた時、
ふと「この場所にお茶室を創ろう」
と思いつきました。
それから一年余り費やしてできた茶室が
「掌庵」です。

全ての物は人の手で作られますが、その中に愛があれば必ず美しいものになります。
それは着物を見ていても感じていることですが、「掌庵」はまさに多くの人の手と愛によってつくられ、杜の中に根を持った、とても美しい建物になりました。
87年後のたかすの杜
100年後のことを想ってつくった杜は、
13年の歳月を、回りの喧騒をよそに淡々と育ち、生きています。
その生き方を見る度に、流されず、うろうろせず、しなやかに強く生きることの大切さを確認します。
「たかすの杜」が100年を迎える87年後の世界はどうなっているでしょうか?
この今新町にたかすの杜が残り、街と人が幸せそうにそこにいることを切に願います。
2018年8月吉日
たかす店主 蓮井将宏